南阿蘇村は、村域全体が共有財産としての普遍的価値(自然環境、景観、生態系、歴史・文化、人々の営みの調和)を有していると認識しています 。本条例は、この価値を次世代へ継承するため、一定規模以上の開発行為および特定産業施設に対し、「普遍的価値リスク評価」の実施および「永続的な維持管理責任」を求めるものです 。
1 事業者に課される立証責任(条例第13条)
本村において特定開発行為等を行おうとする者は、その計画が普遍的価値を一切毀損しないことを客観的に立証しなければなりません 。
- 普遍的価値リスク評価書の提出: 事業者は、自らの責任と負担において専門家による調査を行い、景観、生態系、防災、生活環境等への影響を専門的に分析した評価書を作成し、村長へ提出する義務があります。
- 専門家による厳格な審査: 提出された評価書は、学識経験者等で構成される「南阿蘇村普遍的価値審査委員会」において、専門的・客観的な見地から精査されます。
- 計画の見直し・取りやめの指導: 審査の結果、回復不能な価値の毀損や土砂災害等の重大な危険性が回避されていないと判断された場合、村長は計画の変更や事業計画の取りやめを含む必要な措置を指導します。
2 永続的な責任と負担(条例第6条・第8条)
本条例では、事業に伴うリスクと責任のすべてを事業者が負うことを原則としています。
- 紛争および損害への自己責任: 地域住民との紛争や他人に与えた損害は、すべて事業者の責任と負担で解決しなければなりません 。村に対し、紛争解決の斡旋や賠償の肩代わりその他いかなる責任の転嫁も求めることはできません 。
- 維持管理責任の永続的継承: 施設および環境の維持管理責任は、事業の譲渡、相続その他の理由により所有者が変わった場合においても、永続的に承継されます 。
- 原状回復の義務化: 事業の中止または施設の廃止に際しては、事業者の責任と負担において、速やかに普遍的価値を損なわない状態へと原状回復しなければなりません 。
3 対象となる施設および行為(施行規則第2条・第3条)
以下の基準に該当する計画は、本条例に基づく手続きの対象となります 。
分類対象基準
- 特定産業施設蓄電池(10,000kWh以上)、太陽光発電(50kW超)、風力発電(13m超)、産業廃棄物処理施設等
- 大規模開発3,000平方メートル以上の造成、開墾、土石採取等(複数年又は段階的に行われ、その合計が3,000平方メートル以上となるものを含む。)
- 核心となる区域砂防指定地、土砂災害特別警戒区域の河川・渓流から30m以内の区域等
- その他、周辺の景観及び生態系に著しい影響を及ぼすおそれのある延べ面積1,000平方メートル以上の工場、倉庫、物流施設、大規模なレジャー・観光施設等
事業検討にあたっての留意事項
本条例は、南阿蘇村の普遍的価値(自然、景観、文化の調和)の維持を目的としており、これらと調和しない開発行為を抑制する仕組みを備えています。事業者は、本条例が求める「科学的・客観的な立証」および「永続的な維持管理責任」の履行が可能であるか、計画の初期段階において極めて慎重に判断する必要があります。
村の普遍的価値に深刻な影響を及ぼすと判断される事業計画については、本条例の理念に基づき、計画の取りやめを含む指導・勧告の対象となります。
【重要】既存の施設・開発事例との関係について
本条例に基づく審査は、南阿蘇村が次世代へ継承すべき「普遍的価値」を絶対的な基準として行います。以下の点に十分留意してください。
(1) 過去の事例は「適合」の根拠になりません
条例施行以前(令和8年3月31日以前)に設置された既存の施設、又は、既に法令に基づく必要な許認可を取得し、適法に事業に着手しているものについては、本条例が定める高度な保全基準が確立される以前の不十分な規制下で設置されたものです。これら「過去の事例」が存在することは、本審査において計画の妥当性や調和を証明する根拠には一切なり得ません。
(2) 累積的影響の厳格な評価
本審査では、単体の計画だけでなく、周辺の既設施設と合算された「累積的な影響」を評価します。過去の開発によって既に価値が損なわれている地域においては、さらなる追加的毀損を防ぐため、より厳格な判断が下されます。
(3) 「不適切な開発」の連鎖の遮断
南阿蘇村は、過去の開発行為から得られた教訓を真摯に受け止め、本条例を制定しました。本条例の施行以降、すべての計画は過去の事例に関わらず、審査会による客観的かつ厳格な評価の対象となります。審査会において、南阿蘇村の普遍的価値と調和せず、その誠実性を損なうとの意見が示された開発行為については、村は当該意見に基づき、計画の中止や抜本的な見直しを求めるなど、条例の規定に則り厳正に対処します。これにより、普遍的価値の維持に資さない開発の連鎖を抑止し、次世代へ適正な土地利用を継承します。
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条例・規則