選挙運動と政治活動
1 選挙運動と政治活動の違い
政治上の目的をもって行われるいっさいの活動が政治活動と言われています。ですから、広い意味では選挙運動も政治活動の一部なのですが、公職選挙法では、選挙運動と政治活動を理論的に明確に区別しており、それらを定義付けすると次のようになります。
【選挙運動】
特定の選挙に、特定の候補者の当選をはかること又は、当選させないことを目的に投票行為を勧めること。
【政治活動】
政治上の目的をもって行われるいっさいの活動から、選挙運動にわたる行為を除いたもの。
2 選挙運動の期間
選挙運動は、公示日(告示日)に立候補の届出をしてから投票日の前日までとなります。それ以外の期間、たとえば、立候補の届出前にする選挙運動は、事前運動として禁止されています。
3 事前運動の禁止
選挙運動期間前に選挙運動をすることは、「事前運動」として公職選挙法で禁止されています。具体的にある行為が選挙運動であるかどうかは、取締機関がその行為の態様、すなわちその行為のなされる時期、場所、対象について総合的に実態を把握し、それが特定の候補者のための投票獲得に直接又は、間接に必要かつ有利な行為であるかどうかを実態に即して判断することになります。
4 候補者が行う選挙運動
公職選挙法により認められた候補者が行う選挙運動は、ポスターなどの印刷物や演説会などの言論などによって行われますが、その方法の主なものは次のとおりです。ただし、選挙の種類により、その方法、あるいは数量や規格などが異なるものがあります。
○選挙事務所の設置
○選挙運動用自動車の使用
○選挙運動用はがき
○新聞広告
○選挙運動用ビラの配布(衆・参議院議員選挙・地方公共団体の長の選挙のみ)
○選挙運動用ポスターの掲示
○街頭演説
○個人演説会
○電話による選挙運動
○来訪者や街頭で出会った人など個々面接による選挙運動
5 文書図画による選挙運動の制限
文書図画とは、公職選挙法上では文字、記号、絵、写真などが記載されたものをいい、映像や映写など、視覚に訴えるもの全てが含まれます。特にビラ、ポスター、郵便物など文書図画による選挙運動は、お金のかかる選挙の原因になりやすいことから、選挙の種類ごとに細かく制限されています。
6 禁止されている選挙運動
○買収
選挙犯罪のうちでは、最も悪質なもので、法律でも厳しい罰則が定められています。候補者は勿論、選挙運動の責任者などが処罰された場合は、当選が無効になることもあります。
○個別訪問
誰であっても、特定の候補者に投票してもらうことを目的に、住居や会社、商店などを個別に訪問してはいけません。また、特定の候補者名や政党名あるいは演説会の開催について言い歩くこともできません。
○あいさつを目的とする有料広告
候補者や後援団体は、選挙区内にある者に対し、時候、慶弔や激励などのあいさつを目的とする広告を有料で新聞、雑誌に掲載したり、テレビやラジオで放送したりしてはいけません。
○飲食物の提供
誰であっても、選挙運動に関して飲食物を提供してはいけません。ただし、お茶や通常用いられる程度のお菓子や果物は除かれます。また、選挙運動員に渡す一定の数・額の弁当も除かれます。
○署名運動
誰であっても、特定の候補者に投票をするように、あるいは投票しないようにすることを目的として選挙人に対し署名を集めてはいけません。
○気勢を張る行為
誰であっても選挙運動のために、いわゆるデモ行為をしたり、人目を引こうと自動車を連ねたり隊列を組んで往来したりしてはいけません。他にも、鐘や太鼓、ラッパなどを高々と鳴らしたり、花火などを用いたりすることも気勢を張る行為として禁止されています。
7 インターネットを利用した政治活動
選挙運動にわたらない純粋な政治活動として、インターネットのホームページを利用することは自由にできます。しかし、純粋な政治活動として使用するホームページであっても、候補者が選挙運動期間中に開設したり、又は、書き換えをすることは、新たな文書図画の頒布とみなされ、選挙運動の禁止を免れる行為として公職選挙法に違反することがあります。