阿蘇地域の降雨量は全国平均の2倍余り、広大な草原がこの雨水を地下に浸透させ、カルデラと呼ばれるお盆のような地形に貯まり、雨水は地下水へと姿を変えます。
こうして生まれた地下水は、長い年月を経て再び地表に現れ湧水となり、ここで生活する人々の暮らしを支えています。
阿蘇では「草原が地下水を育む」
一般的には「森が水を育む」と言われていますが、阿蘇は例外で「草原が地下水を育む」のです。
下の図をご覧ください。森林は葉や枝で雨水を遮るので、草原のほうが地表面に届く雨水が多くなります。また、森林は地中から多くの水を吸い上げます。地下水を育む能力は草原の方が優れているのです。
南阿蘇村は「水の生まれる郷」と呼ばれるほど湧水が豊富で、九州の6つの一級河川の源となっています。
意外と知られていないのが草原の炭素固定機能です。森林と比較すると年間でおそよ7倍ものCO2を固定しています。
景観と地下水を守る主な取組み
本村は「南阿蘇村地下水保全基金」を設置して、以下のような取り組みを進めています。
●野焼きの支援による草原保全
草原を保全するために、野焼きを実施している集落への支援金の交付、また急斜面用草刈り機導入など、野焼き作業省力化の支援を実施していきます。
●エシカルな農畜産業の創出
村・慶應大学大学院メディアデザイン研究科・熊本県畜産農業協同組合連合会の三者で、「阿蘇の農畜産業と環境保全に関する相互連携協定」を締結し、エシカル消費に対応したくまもとあか牛の生産と草原環境維持をテーマに連携し、阿蘇の草原を活かす「エシカルな農畜産業」の創出を目指します。
●冬期湛水による地下水涵養
冬期湛水を4カ月以上(年度内)実施する場合、地下水保全活動として村独自に10aあたり3,000円を補助しています。(写真)
●雨水湛水事業による水源涵養
大学と連携し、6月頃の水田に雨水を通常の倍程度の水を貯留し、水源涵養量の向上を目指す実証事業を始めます。