○南阿蘇村普遍的価値の継承と地域開発の適正化に関する条例

令和8年3月13日

条例第4号

第1章 総則

(目的及び理念)

第1条 南阿蘇村は、村域全体が世界に誇る普遍的価値を有する阿蘇の文化的景観、豊かな自然生態系並びにそれらを育んできた歴史的・文化的な営みが、不可分の共有財産であることを深く認識し、その景観、生態系、生物多様性及び地域文化の純粋性を統合的に保全することを基本とする。

2 全ての村民、事業者及び来訪者がその継承に責任を負うことを理念として、短期的な経済合理性や外部要因に左右されない健全で持続可能な地域社会の実現に資することを目的とする。

(用語の定義)

第2条 この条例において、次に掲げる用語の意義は、当該各号に定めるところによるものとする。

(1) 普遍的価値の純粋性:阿蘇の景観、生態系、生物多様性、文化及び歴史的な営みが持つ「かけがえのない固有の価値」が、調和を乱す異質な施設や行為によって損なわれることなく、本質的かつ完全な状態を維持していることをいう。

(2) 開発行為:建築物の建築、特定工作物の建設、土石の採取、土地の開墾その他の土地の区画形質の変更を伴う行為をいう。

(3) 特定開発行為:前号に掲げる開発行為のうち、規則で定める規模以上のものをいう。

(4) 特定産業施設:大規模蓄電池設備及び大規模太陽光発電設備その他これらに類するものとして規則で定める大規模な産業施設をいう。

(5) 核心となる区域:砂防法第2条の規定により指定された土地(以下「砂防指定地」という。)、土砂災害特別警戒区域及び砂防法第1条に規定する砂防設備、並びにこれらの周辺の区域のほか、学術上又は生態系保全上特に重要であり、村長が指定する区域をいう。

(6) 普遍的価値リスク評価:規則で定めるところにより事業者が作成する、開発行為が普遍的価値に及ぼす影響及び回復不能な毀損のリスクを専門的に分析し、その回避策及び残存リスクを評価することをいう。

(基本的原則)

第3条 地域開発は、普遍的価値の純粋性を維持することを最優先とし、回復不能な普遍的価値の毀損及び阿蘇特有の地形・地質に起因する土砂災害等の重大な危険性の増大をもたらすおそれのある開発行為については、これを厳に回避することを基本とする。

2 全ての事業者及び土地所有者は、自らの行為が村の環境・文化的な許容力(キャパシティ)を超過し、普遍的価値に不可逆的な影響を与えないよう最大限の注意義務を負う。

第2章 事業者の責務及び環境の保全

(関係法令の遵守)

第4条 事業者は、この条例に定めるもののほか、農地法、森林法、文化財保護法、自然公園法その他開発行為に関係する法令及び条例を遵守し、その規定に基づく必要な手続きを適正に履行する責務を負うものとする。

(事業者の責務)

第5条 事業者は、前条の基本的原則を遵守するとともに、自らの事業が阿蘇の景観、自然生態系及び地域社会に与える影響について事前に最大限の調査及び普遍的価値リスク評価を行い、その影響を回避又は最小化する最大限の措置を講ずる責務を負うものとする。

(近隣との調整及び責任の原則)

第6条 事業者は、開発行為の計画及び実施にあたり、地域住民や利害関係者との間に紛争が生じないよう、あらかじめ計画内容について十分な説明と調整を行う責務を負うものとし、万一、紛争が生じた場合又は他人に損害を与えた場合は、事業者の責任と負担において一切を解決しなければならず、村に対し、紛争解決の斡旋、調停、又は賠償の肩代わりその他いかなる責任の転嫁又は迷惑も求めないものとする。

(環境整備、維持管理及び協定)

第7条 事業者は、その開発行為によって生じる影響を最小化するため、道路、緑地、排水施設、給水施設等の環境施設を自らの責任と負担において整備し、将来にわたって適正に維持管理しなければならない。

2 村長が必要と認めるときは、開発行為等に関し、前項の施設の整備及び永続的な維持管理体制について、環境保全のための協定を締結するものとする。

3 前2項の施設に起因して生じた不具合、損壊又は機能低下については、事業者の責任と負担において修繕等を行うものとし、村に対しその費用又は管理の引き継ぎを求めてはならない。

(維持管理責任の承継及び地域協力)

第8条 事業者は、その開発行為により設置した防災施設、環境施設その他公共の用に供する施設の永続的な維持管理について一切の責任と負担を負うものとし、当該事業を譲渡、相続又はその他の理由により承継させる場合は、本条に定める維持管理義務を承継者に確実に引き継がせなければならない。

2 前項の維持管理の責任は、当該施設の承継者、所有者又は占有者に対しても、永続的に継承されるものとする。

(生活環境への最大限の配慮)

第9条 事業者は、福祉施設、学校、病院及び居住地その他の生活環境に利用される区域の周辺において開発行為を行うときは、当該施設及び区域の利用者並びに居住者の安全、静穏な生活環境及び健康に最大限の配慮をしなければならない。

(生活環境保全の責務)

第10条 住民及び土地の所有者等は、優良な環境を後世に伝えるよう努めるとともに、空き地又は分譲地について、雑草の繁茂、害虫の発生、火災又は不法投棄を誘起するおそれが生じないよう、適切な管理のために必要な措置を講ずる責務を負うものとする。

(爆音機の使用制限)

第11条 爆音機を使用する者は、村長が別に定める時間帯及び区域においては爆音機を使用してはならず、その使用に関し規則で定める事項を遵守しなければならない。

第3章 開発の適正化及び抑制

(特定産業施設の抑制)

第12条 村長は、特定産業施設が普遍的価値リスク評価において回復不能な普遍的価値の毀損又は土砂災害等の重大な危険性の増大をもたらす残存リスクが極めて高いと判断したときは、第18条の規定に基づき、当該施設の設置場所の変更、規模の縮小又は事業計画の断念を含む必要な措置を指導するものとする。

(開発行為における責任)

第13条 事業者は、その開発行為の計画及び実施にあたり、当該事業活動が回復不能な普遍的価値の毀損及び土砂災害等の危険性の増大をもたらすことのないよう、その責任と負担において適切な措置を講じなければならない。

2 第2条第3号から第5号までの規定にかかる行為を行おうとする者は、前項の措置を講ずるにあたり、規則で定める専門的な知見を有する者の検証を経た普遍的価値リスク評価に基づき、その妥当性を客観的に証明しなければならない。

3 事業者は、開発行為の中止又は施設の廃止に際しては、自らの責任と負担において、速やかに普遍的価値を損なわない状態への原状回復を行わなければならない。

第4章 開発行為の審査

(届出)

第14条 規則で定める開発行為を行おうとする者は、当該開発行為に着手する前に、規則で定める期日までに、村長に届け出なければならない。

(委員会の設置)

第15条 村長は、この条例の目的及び理念に基づき、開発行為が普遍的価値に及ぼす影響を専門的かつ公正に審査するため、南阿蘇村普遍的価値審査委員会(以下「委員会」という。)を設置するものとする。

(委員会の意見聴取)

第16条 村長は、規則で定める特定開発行為に係る届出があった場合において、当該届出に添付された普遍的価値リスク評価書の専門的妥当性の確認又は当該開発行為が普遍的価値に及ぼす影響について専門的な判断を要すると認めるときは、委員会の意見を聴取することができる。

(規則への委任)

第17条 委員会に関する組織及び運営に必要な事項、並びに開発行為の届出、審査の手続きその他この条例の施行に関し必要な事項は、規則で定める。

第5章 行政措置

(指導)

第18条 村長は、第16条の規定により委員会の意見を聴取した開発行為について、当該意見を踏まえ、当該計画が第3条に定める基本的原則を遵守できないと認められる具体的なリスクがあるときは、当該事業者に対し、指導書を交付し、計画の見直し又は必要な措置を講ずるよう指導することができる。

(勧告)

第19条 村長は、前条の規定による指導を受けた事業者が、正当な理由なくこれに従わず、当該開発行為が普遍的価値の回復不能な毀損又は土砂災害等の重大な危険性の増大をもたらすおそれが特に高いと認めるときは、当該事業者に対し、勧告書を交付し、計画の変更その他必要な措置を講ずるよう勧告することができる。

(公表)

第20条 村長は、前条の規定による勧告を受けた事業者が、正当な理由なくその勧告に従わない場合において、地域社会及び普遍的価値の保護のため特に必要があると認めるときは、当該事業者の氏名又は名称、住所及び勧告の内容を公表(インターネットの利用その他の方法による周知を含む)することができる。

2 村長は、前項の規定による公表をしようとするときは、当該事業者に対し、あらかじめ、その旨を通知し、意見を述べる機会を与えなければならない。

(立入調査)

第21条 村長は、この条例の施行に必要な限度において、その職員に、開発行為に係る土地又は施設に立ち入り、当該開発行為の状況若しくは当該土地にある物件を調査させ、又は関係者に質問させることができるものとする。

第6章 雑則

(適用除外)

第22条 第12条から第16条までの規定は、国又は地方公共団体が行う事業、非常災害のための応急措置として行う事業、農業及び林業の用に供する事業であって国、地方公共団体若しくはこれらに準ずる者が主体となって行うもの、誘致企業にかかるものであって、村長が普遍的価値の維持に支障がないと認めたもの、その他公益上の事由により村長が特に必要と認めた場合には、適用しないものとする。

(施行日)

1 この条例は、令和8年4月1日から施行する。

(経過措置)

2 この条例の施行の際、既にこの条例の規定の適用を受ける開発行為に着手している者、又は開発行為の目的をもって関係法令(都市計画法、建築基準法その他の法令をいう。)に基づき適法に許可を受け、若しくは届出を行っている者については、この条例の規定(第3条及び第13条第1項の規定を除く。)は適用しない。

(土地取得者等に関する配慮)

3 この条例の施行の際、既に開発行為の目的をもって土地の所有権その他の権利を取得している者については、村長は、この条例の目的を達成するため必要な指導、助言を行うものとし、村長は、当該事業者が第3条の基本的原則に著しく反する開発行為を行おうとしない限り、当該開発行為の適正化に関し最大限の配慮をするものとする。

(南阿蘇村環境保全条例の廃止)

4 南阿蘇村環境保全条例(平成17年南阿蘇村条例第124号)は、廃止する。

南阿蘇村普遍的価値の継承と地域開発の適正化に関する条例

令和8年3月13日 条例第4号

(令和8年4月1日施行)